慢性硬膜下血腫とは?転倒後の物忘れや歩きにくさは要注意
はじめに
「最近、歩くのが遅くなった」
「認知症が進んだ気がする」
「なんとなく元気がなくなった」
高齢者ではこのような症状の原因として認知症が疑われることがあります。
しかし実際には、**慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)**という治療可能な病気が隠れていることがあります。
慢性硬膜下血腫は、転倒や軽い頭部打撲のあとに、数週間から数か月かけてゆっくり出血がたまる病気です。
適切な治療によって改善が期待できるため、見逃さないことが大切です。
慢性硬膜下血腫とは?
脳は「硬膜」という膜に包まれています。
慢性硬膜下血腫は、脳と硬膜の間に少しずつ血液がたまり、脳を圧迫する病気です。
若い人よりも高齢者に多くみられます。
高齢になると脳がやや萎縮し、脳と硬膜の間に隙間ができるため、軽い衝撃でも出血しやすくなります。
原因
慢性硬膜下血腫の原因として多いのは頭部外傷です。
ただし、派手な転倒や交通事故ばかりではありません。
よくある原因
- 転倒
- ベッドやソファからの転落
- 家の中でふらついて壁や家具に頭をぶつける
- 本人が覚えていない軽い頭部打撲
- 抗血小板薬や抗凝固薬の内服
- 高齢による脳萎縮
実際には、
「頭なんてぶつけていない」
と本人が話していても、ご家族から詳しく聞くと数週間〜数か月前に転倒していたことが判明するケースも少なくありません。
症状
症状はゆっくり進行するため、加齢や認知症と間違われることがあります。
よくみられる症状
- 歩きにくい
- ふらつく
- 片側の手足が動かしにくい
- ろれつが回らない
- 物忘れが目立つ
- 元気がなくなる
- 眠気が強くなる
- 軽い頭痛が続く
- 性格が変わったように見える
また、症状がほとんどなく、たまたま撮影したCTやMRIで見つかることもあります。
認知症と間違われることがあります
慢性硬膜下血腫は、
- 認知症
- うつ病
- パーキンソン病
- 正常圧水頭症
などと似た症状を示すことがあります。
特に、
「認知症が急に悪化した」
「ここ数か月で急に歩けなくなった」
という場合には注意が必要です。
高齢者の物忘れや歩行障害の原因は認知症だけではありません。
典型的な例
80代の男性が数か月前に自宅で転倒しました。
その後は普段通り生活していましたが、徐々に歩く速度が遅くなり、物忘れも増えてきました。
ご家族は認知症の進行を疑いましたが、頭部CTを撮影したところ慢性硬膜下血腫が見つかりました。
治療後には歩行や反応が改善し、以前に近い状態まで回復しました。
検査
診断には頭部CTが最も重要です。
必要に応じてMRIを追加することもあります。
検査でわかること
- 血腫の大きさ
- 血腫の位置
- 脳の圧迫の程度
- 他の病気の有無
受傷直後は異常がなくても、その後数週間〜1か月ほどかけて血液がたまることがあります。
そのため、
- 頭をぶつけたあとに症状が出てきた
- 転倒後から様子がおかしい
といった場合には、後日CTやMRIを再検することがあります。
治療
慢性硬膜下血腫と診断されても、全員が手術になるわけではありません。
保存的治療
症状が軽い場合や血腫が小さい場合には経過観察を行います。
脳神経外科では、
五苓散(ごれいさん)
という漢方薬を使用し、血腫の自然吸収を促しながら経過を見ることもあります。
数か月かけて徐々に改善するケースもあります。
手術治療
以下の場合には手術が検討されます。
- 麻痺がある
- 意識障害がある
- 歩行障害が進行している
- 血腫が大きい
- 脳の圧迫が強い
一般的には「穿頭血腫洗浄術」という手術が行われます。
頭蓋骨に小さな穴を開け、たまった血液を排出する治療です。
こんな方は一度CTを検討しましょう
- 転倒を繰り返している
- 最近歩き方が変わった
- 認知症が急に悪化したように見える
- 軽い頭痛が続いている
- 本人は転倒を否定するが家族は心配している
慢性硬膜下血腫は治療によって改善が期待できる病気です。
「年齢のせいだから」
「認知症だから仕方ない」
と決めつけず、一度頭部CTを撮影することも大切です。
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まとめ
慢性硬膜下血腫は、高齢者に多い治療可能な病気です。
転倒や軽い頭部打撲から数週間〜数か月後に症状が出現するため、本人もご家族も気づかないことがあります。
- 歩きにくい
- 物忘れ
- 元気がない
- 頭痛が続く
といった症状がある場合には、慢性硬膜下血腫の可能性も考えてみましょう。
認知症や加齢と決めつけず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
