本態性振戦とは?手の震えの原因とパーキンソン病との違いを神経内科専門医が解説

脳と神経の相談室

コップを持つと手が震える…それは本態性振戦かもしれません

  • コップを持つと手が震える
  • 字を書くと震える
  • お箸が使いにくい
  • 人前だと震えが強くなる

このような症状で悩んでいる方は少なくありません。

手の震えの原因として最も多い病気のひとつが「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」です。

一方で、手の震えはパーキンソン病や薬の副作用、甲状腺の病気などでも起こるため注意が必要です。

この記事では、本態性振戦の特徴や治療法、パーキンソン病との違いについて神経内科専門医が解説します。


本態性振戦とは?

振戦(しんせん)とは、自分の意思とは関係なく体の一部が規則的に震えることをいいます。

本態性振戦は、その中でも最も頻度の高い病気です。

命に関わる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすことがあります。


本態性振戦の症状

手の震え

最も多い症状です。

例えば、

  • コップを持つ
  • 箸を使う
  • 字を書く
  • スマートフォンを持つ
  • 化粧をする

といった動作で震えが目立ちます。

頭の震え

頭が小刻みに揺れることがあります。

  • 「うんうん」
  • 「いやいや」

のような動きとして見えることがあります。

声の震え

声帯が震えることで、

  • 声が震える
  • 電話で気づかれる

といった症状がみられることがあります。


本態性振戦の特徴

動作をすると震える

本態性振戦は「動作時振戦」が特徴です。

何もしていない時よりも、

  • コップを持つ
  • 箸を使う
  • 字を書く

などの場面で震えが目立ちます。

緊張で悪化する

  • 人前で話す
  • 会議で発言する
  • 発表をする

などの場面で強くなることがあります。

飲酒で一時的に改善することがある

本態性振戦に特徴的な所見です。

ただし治療目的で飲酒することはおすすめできません。


本態性振戦はどんな人に多い?

若い頃から震えが続いている方や、家族に同じ症状がある方では診断しやすいことがあります。

実際に、

「父も手が震えていた」
「祖母も字を書くと震えていた」

という方は珍しくありません。

一方で、

高齢になって急に震えが出てきた場合は、本態性振戦以外の病気も考える必要があります。


パーキンソン病との違い

手の震えで最も心配される病気がパーキンソン病です。

本態性振戦パーキンソン病
動作時に震える安静時に震える
動きはほぼ正常動作が遅くなる
歩行は比較的保たれる小刻み歩行になる
両側性が多い左右差が多い

パーキンソン病では、

  • 動作が遅い
  • 表情が乏しい
  • 歩幅が小さい
  • 転びやすい

などの症状を伴います。

パーキンソン病について詳しくはこちら


本態性振戦と間違えやすい病気

薬剤性振戦

薬の副作用で震えが出ることがあります。

代表的な薬として、

  • 抗うつ薬
  • 抗精神病薬
  • 気管支拡張薬
  • 一部の抗てんかん薬

などがあります。

また抗精神病薬では、

  • 薬剤性パーキンソニズム
  • 遅発性ジスキネジア

などが起こることもあります。

薬を始めてから震えが出た場合は主治医へ相談しましょう。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰になると、

  • 動悸
  • 発汗
  • 体重減少
  • 手の震え

がみられることがあります。

脳梗塞や脳腫瘍

まれですが、

  • 急に震えが出た
  • 片側だけ震える
  • 他の神経症状を伴う

場合は注意が必要です。


原因

原因は完全には解明されていません。

近年では、

  • 小脳
  • 脳幹
  • 神経回路

の異常が関与すると考えられています。

また遺伝的な要素も指摘されています。


検査

診察が最も重要

本態性振戦を診断するための特別な検査はありません。

神経内科での診察が最も重要です。

MRI検査

必要に応じて、

  • 脳梗塞
  • 脳腫瘍
  • その他の神経疾患

を除外するためにMRIを行います。


治療

経過観察

日常生活に支障がなければ治療を行わないこともあります。

本態性振戦は命に関わる病気ではありません。

薬物療法

症状が気になる場合は薬を使用します。

代表的な薬は

  • インデラル(プロプラノロール)
  • アロチノロール

です。

また、

  • デパス(エチゾラム)
  • リーゼ(クロチアゼパム)

などが有効な場合もあります。

特に緊張やストレスで震えが悪化する方では効果を感じることがあります。

手術治療

薬で十分な効果が得られない重症例では

  • 脳深部刺激療法(DBS)
  • 集束超音波治療(FUS)

が検討されます。


受診の目安

以下の場合は脳神経内科を受診しましょう。

  • 震えが徐々に悪化している
  • 日常生活に支障がある
  • パーキンソン病か心配
  • 片側だけ震える
  • 急に震えが出てきた
  • 他の神経症状を伴う

よくある質問

本態性振戦は認知症になりますか?

通常は認知症の原因にはなりません。

本態性振戦は治りますか?

完全に消すことは難しいですが、薬で改善することがあります。

本態性振戦は命に関わりますか?

命に関わる病気ではありません。


まとめ

  • 本態性振戦は手の震えの代表的な原因
  • 動作時に震えるのが特徴
  • 緊張で悪化しやすい
  • 家族歴がみられることがある
  • パーキンソン病や薬剤性振戦との区別が重要
  • 気になる震えは脳神経内科へ相談を

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神経内科専門医・総合内科専門医
はじめまして。「脳と神経の相談室」を運営している女医です。 神経内科専門医・総合内科専門医として15年以上診療に携わっています。 外来でよくいただく質問を中心に、しびれ、頭痛、めまい、認知症などについて、専門的な内容をできるだけわかりやすく解説します。 不安を少しでも減らし、受診のきっかけになるような情報発信を心がけています。
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