【手が震えるのはなぜ?】脳神経内科専門医が原因と受診の目安をわかりやすく解説
「字を書くと手が震える」
「コップを持つと震える」
「何もしていないのに手が震える」
「最近、家族から手が震えていると言われた」
手の震えがあると、
「パーキンソン病では?」
「脳の病気では?」
と心配になる方も多いと思います。
しかし、手の震えには、緊張や疲れによって起こるものから、本態性振戦、パーキンソン病、甲状腺の病気など、さまざまな原因があります。
原因を考えるうえで大切なのは、まず
「どんな時に震えるのか」
を確認することです。
この記事では、手の震えの主な原因と、病院を受診した方がよい症状について、脳神経内科専門医がわかりやすく解説します。
まず確認|手は「いつ」震えますか?
手の震えを診察するとき、非常に重要なのが震えが出るタイミングです。
大きく分けると、次のようなタイプがあります。
| 震え方 | 具体例 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 何もしていない時に震える | 膝の上に手を置いていても震える | パーキンソン病など |
| 手を伸ばすと震える | 両手を前に伸ばすと細かく震える | 本態性振戦、生理的な震え、甲状腺疾患、薬剤など |
| 動作をすると震える | コップを持つ、字を書く、箸を使うと震える | 本態性振戦など |
| 目標に近づくほど震える | コップを取ろうとすると手が大きく震える | 小脳の病気など |
このように、同じ「手の震え」でも、震え方によって考えられる原因は変わります。
緊張・疲れ・寝不足でも手は震えます
実は、病気がなくても手が細かく震えることがあります。
これを**生理的振戦(せいりてきしんせん)**といいます。
誰にでもわずかな震えはありますが、
- 緊張している
- 不安が強い
- 疲れている
- 睡眠不足
- カフェインを多くとった
- 激しい運動をした
- 空腹や血糖低下がある
などの状況では、普段は気にならない震えが目立つことがあります。
たとえば、
「人前で字を書こうとすると手が震える」
「寝不足の日だけ細かく震える」
「コーヒーを何杯も飲んだあとに震える」
という場合には、このような生理的な震えの可能性もあります。
原因となっている状況が改善すると、震えも軽くなることが多いのが特徴です。
ただし、震えが続く場合や徐々に強くなる場合には、別の病気が隠れていないか確認することが大切です。
本態性振戦|コップや字を書く時に震える
手の震えを起こす代表的な病気が**本態性振戦(ほんたいせいしんせん)**です。
特に、
- コップを持つ
- 箸を使う
- 字を書く
- スマートフォンを持つ
- 手を前に伸ばす
といった姿勢を保つ時や動作をする時に震えが目立ちます。
一方で、何もしていない時には、震えがあまり目立たないことが多いのが特徴です。
また、
- 緊張すると強くなる
- 疲れると悪化する
- 家族にも震えがある
- 若い頃から震えている
- 頭や声が震えることがある
といった特徴がみられることもあります。
飲酒によって一時的に震えが軽くなることがありますが、治療目的で飲酒することはおすすめできません。
本態性振戦は命に関わる病気ではありませんが、症状が強くなると、
- 字が書けない
- 食事がしにくい
- コップから飲み物をこぼす
- 人前で手を使うのが怖い
など、日常生活に支障が出ることがあります。
▶︎ 本態性振戦について詳しくはこちら
パーキンソン病|何もしていない時に片手が震える
パーキンソン病でも、手の震えがみられます。
本態性振戦との大きな違いの一つが、安静時に震えが出やすいことです。
たとえば、
「テレビを見ながら膝の上に手を置いていると震える」
「歩いている時に片手だけ震えている」
といった症状がみられることがあります。
また、パーキンソン病では震えだけではなく、
- 動作がゆっくりになる
- 歩幅が小さくなる
- 片方の腕を振らなくなる
- 表情が乏しくなる
- 字が小さくなる
- ボタンをかけにくくなる
- 体がこわばる
などの症状を伴うことがあります。
左右同時ではなく、片側から症状が始まることが多いのも特徴です。
なお、パーキンソン病だから必ず手が震えるわけではありません。
震えがほとんどなく、「動きにくさ」や「歩きにくさ」が中心の方もいます。
▶︎ パーキンソン病について詳しくはこちら
本態性振戦とパーキンソン病の違い
手の震えでよく比較されるのが、この2つです。
| 本態性振戦 | パーキンソン病 | |
|---|---|---|
| 震えが出やすい時 | 手を伸ばす・動作をする時 | 何もしていない時 |
| 左右差 | 両手に出ることが多い | 片側から始まることが多い |
| 動作の速さ | 比較的保たれる | 動作が遅くなる |
| 歩き方 | 基本的には保たれる | 歩幅が小さくなることがある |
| 字 | 震えて書きにくい | 字が小さくなることがある |
| 頭・声の震え | みられることがある | 比較的少ない |
ただし、実際には典型的な症状だけではない場合もあり、診断には脳神経内科での診察が重要です。
甲状腺機能亢進症|細かく速い震え
甲状腺ホルモンが過剰になる**甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)**でも、手が震えることがあります。
特徴は、手を前に伸ばした時などにみられる細かく速い震えです。
震え以外に、
- 動悸
- 汗をかきやすい
- 暑がりになる
- 体重が減る
- 下痢
- 疲れやすい
などを伴うことがあります。
血液検査で甲状腺ホルモンを調べることで診断につながります。
手の震えとともに動悸や体重減少などがある場合には、内科で相談してみましょう。
薬の副作用で手が震えることもあります
薬の副作用によって手の震えが出たり、もともとの震えが強くなったりすることがあります。
たとえば、
- 気管支拡張薬
- ステロイド
- 一部の抗うつ薬
- 一部の精神科の薬
- 気分安定薬
- 一部の抗てんかん薬
- 甲状腺ホルモン薬
などです。
また、一部の薬では薬剤性パーキンソニズムを起こし、震えだけではなく動作の遅さや体のこわばりが出ることもあります。
「新しい薬を飲み始めてから震えるようになった」
「薬を増量してから震えが強くなった」
という場合には、服用している薬を確認することが重要です。
ただし、自己判断で薬を中止せず、処方した医師に相談してください。
アルコールを急にやめた時の震え
長期間、多量の飲酒をしていた方が急に飲酒量を減らしたり中止したりすると、アルコール離脱症状として手が震えることがあります。
- 両手の震え
- 発汗
- 動悸
- 不安
- 不眠
- 落ち着かない
などを伴うことがあります。
重症になると、けいれんや意識障害などが起こることもあるため注意が必要です。
コップを取ろうとすると震えが強くなる|小脳の病気
少し特徴的なのが、目標に近づくにつれて震えが大きくなるタイプです。
たとえば、
「コップを取ろうとして手を伸ばすと、近づくほど大きく震える」
「指で鼻を触ろうとすると手が大きく揺れる」
といった症状です。
このような震えは**企図振戦(きとしんせん)**と呼ばれ、小脳の働きが障害された時にみられることがあります。
小脳の病気では、震えだけではなく、
- ふらつく
- まっすぐ歩けない
- ろれつが回りにくい
- 手足を思った場所にうまく動かせない
などの症状を伴うことがあります。
特に、これらの症状が突然出た場合には、小脳梗塞や小脳出血などの脳卒中を除外する必要があります。
突然の症状では、早めに医療機関を受診してください。
「手が震える」と感じても、実は震えではないこともあります
患者さんが「手が震える」と表現する症状が、医学的な「振戦」とは限りません。
頚椎症・頚髄症
首の神経や脊髄が圧迫されると、
- 手がしびれる
- 箸が使いにくい
- ボタンをかけにくい
- 字が書きにくい
- 細かい作業がしづらい
などの症状が出ます。
患者さんによっては、これを「手が震えてうまく動かせない」と表現することがあります。
実際には震えではなく、**手先の不器用さ(巧緻運動障害)**であることがあります。
▶︎ 頚椎症について詳しくはこちら
不随意運動
自分の意思とは関係なく体が動く症状を、まとめて不随意運動と呼びます。
- ピクッと動く
- 手足がくねくね動く
- 手や顔が勝手に動く
- 同じ動きを繰り返す
など、さまざまなタイプがあります。
「規則的に震える振戦」とは別の症状です。
▶︎ 不随意運動について詳しくはこちら
てんかんによるけいれん
てんかん発作によるけいれんも、「手が震えていた」と表現されることがあります。
- 意識がなくなる
- 呼びかけに反応しなくなる
- 手足が突っ張る
- 手足がガクガク動く
- 発作後にぼんやりする
などがある場合には、単なる振戦とは異なります。
▶︎ てんかんについて詳しくはこちら
突然の震え+ほかの神経症状は要注意
手の震えの多くは緊急性の高いものではありません。
しかし、突然症状が出た場合は注意が必要です。
特に、
- 突然、片側の手がおかしくなった
- 手足に力が入らない
- 顔がゆがんだ
- ろれつが回らない
- 急に強くふらつく
- まっすぐ歩けない
- 物が二重に見える
- 意識がおかしい
などを伴う場合には、脳梗塞や脳出血などの可能性があります。
この場合は様子を見ず、早急に医療機関を受診してください。
▶︎ 脳梗塞の前兆・初期症状について詳しくはこちら
こんな時は一度受診しましょう
次のような場合には、脳神経内科などへの受診をおすすめします。
- 震えが何週間も続いている
- 徐々に震えが強くなっている
- 日常生活に支障が出ている
- 片手だけ震える
- 何もしていない時にも震える
- 動作が遅くなった
- 歩幅が小さくなった
- 歩き方がおかしくなった
- 字が小さくなった
- ボタンをかけにくくなった
- 新しい薬を始めてから震える
- 動悸や体重減少を伴う
- 震え以外の神経症状もある
「年齢のせいかな」と思っていても、原因が分かれば治療できる場合があります。
手の震えは何科を受診すればいい?
原因が分からない手の震えでは、脳神経内科が専門になります。
脳神経内科では、
- 本態性振戦
- パーキンソン病
- 小脳の病気
- 不随意運動
- 薬剤性の症状
- てんかんなどの神経疾患
について診察します。
一方、
- 動悸
- 発汗
- 体重減少
- 下痢
などを伴う場合には、甲状腺疾患の可能性もあるため、まず内科を受診しても構いません。
「脳神経内科ってどんな時に行くの?」という方はこちらも参考にしてください。
まとめ
手の震えには、さまざまな原因があります。
まず確認してほしいのは、
「いつ震えるのか」
ということです。
- 緊張・疲労・寝不足などで細かく震える
→ 生理的な震えの可能性 - コップを持つ・字を書く時に震える
→ 本態性振戦など - 何もしていない時に片手が震える
→ パーキンソン病など - 目標に近づくほど震えが大きくなる
→ 小脳の病気など
という違いがあります。
震えだけで原因を自己判断することは難しいため、症状が続く場合や日常生活に支障がある場合には、一度脳神経内科で相談してみましょう。
特に、突然の震えに、麻痺・ろれつの回りにくさ・強いふらつきなどを伴う場合には、早急な受診が必要です。
