髄膜炎とは?発熱・頭痛・首の硬さなどの症状と受診の目安【神経内科専門医が解説】
発熱と頭痛があると、
「ただの風邪かな?」
「髄膜炎だったらどうしよう」
と心配になる方もいると思います。
発熱や頭痛は風邪などでもよくみられる症状ですが、強い頭痛に発熱や嘔吐、首の硬さなどを伴う場合には、髄膜炎の可能性も考える必要があります。
また、髄膜炎では、熱や頭痛がある一方で、咳・鼻水・のどの痛みなどの「風邪らしい症状」があまり目立たないこともあります。
特に細菌性髄膜炎は、早期の診断と治療が重要な病気です。
この記事では、髄膜炎の症状や原因、風邪との違い、検査や治療、受診の目安について、神経内科専門医がわかりやすく解説します。
髄膜炎とは?
脳や脊髄のまわりは、「髄膜」という膜で覆われています。
髄膜炎とは、この髄膜に炎症が起こる病気です。
原因の多くは、ウイルスや細菌などの感染症です。
一口に髄膜炎といっても原因はさまざまで、比較的軽く経過するものもあれば、急速に悪化して緊急治療が必要になるものもあります。
髄膜炎の主な症状
髄膜炎でよくみられる症状には、
- 発熱
- 強い頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 首が硬い、首を前に曲げにくい
- 光をまぶしく感じる
- 強いだるさ
などがあります。
特に、
「発熱+強い頭痛+首の硬さ」
は、髄膜炎を考えるきっかけになる症状です。
ただし、すべての症状がそろうとは限りません。
「首が硬くないから髄膜炎ではない」と自己判断することもできません。
髄膜炎の「首が硬い」とは?
髄膜炎について調べると、「項部硬直(こうぶこうちょく)」という言葉が出てくることがあります。
これは、単なる肩こりや首こりとは少し違います。
髄膜が刺激されることで、首を前に曲げようとしたときに強い抵抗があったり、痛みが出たりする状態です。
たとえば仰向けになった状態で、あごを胸の方へ近づけようとしても首が曲げにくくなることがあります。
ただし、髄膜炎でも項部硬直がはっきりしない場合があります。
自分で無理に首を曲げて確認する必要はありません。
風邪と髄膜炎はどう違う?
発熱と頭痛だけでは、風邪なのか髄膜炎なのかを自分で完全に見分けることはできません。
一般的な風邪では、
- 鼻水
- 鼻づまり
- のどの痛み
- 咳
などの呼吸器症状を伴うことが多くみられます。
一方、髄膜炎では、発熱や強い頭痛があるわりに、鼻水・咳・のどの痛みなどの、いわゆる「風邪らしい症状」があまり目立たないことがあります。
さらに、
- 頭痛がかなり強い
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 首を前に曲げにくい
- 光がつらい
- 症状がどんどん悪化する
といった症状がみられる場合には注意が必要です。
特に、
「熱と強い頭痛があるのに、咳や鼻水などはほとんどない」
「いつもの風邪とは明らかに違う」
と感じる場合には、髄膜炎も含めて医療機関で評価してもらうことが大切です。
ただし、原因となるウイルスなどによっては風邪のような症状を伴うこともあります。
風邪症状がない=髄膜炎、風邪症状がある=髄膜炎ではない、というわけではありません。
片頭痛との違いは?
片頭痛でも、
- 強い頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 光をまぶしく感じる
など、髄膜炎と似た症状が出ることがあります。
ただし片頭痛では、これまでにも同じような発作を繰り返していることが多く、通常は発熱を伴いません。
一方で、
「今までにない強い頭痛に発熱を伴う」
という場合には、いつもの片頭痛と決めつけず医療機関に相談しましょう。
頭痛全般についてはこちらでも解説しています。
「自分の頭痛がどのタイプなのかわからない」という方は、代表的な頭痛の特徴をまとめたこちらの記事も参考にしてください。
髄膜炎にはどんな種類がある?
髄膜炎は、原因によっていくつかに分けられます。
細菌性髄膜炎
細菌が髄膜に感染して起こる髄膜炎です。
髄膜炎の中でも特に緊急性が高く、急速に重症化することがあります。
疑われた場合には入院し、できるだけ早く抗菌薬による治療を開始します。
ウイルス性髄膜炎
ウイルス感染によって起こる髄膜炎です。
「無菌性髄膜炎」と呼ばれるものの多くも、ウイルス感染によるものです。
細菌性髄膜炎と比べると軽症で、自然に改善するケースもあります。
ただし、症状だけで細菌性かウイルス性かを判断することはできません。
そのため、強い頭痛や発熱がある場合には、まず医療機関で診断を受けることが大切です。
その他の髄膜炎
頻度は高くありませんが、
- 結核
- 真菌
- 一部の薬剤
- 自己免疫疾患
などによって髄膜炎が起こることもあります。
原因によって経過や治療方法は異なります。
意識障害やけいれんがある場合は「脳炎」にも注意
髄膜炎は髄膜に炎症が起こる病気ですが、脳そのものに炎症が起こる病気を「脳炎」といいます。
発熱や頭痛に加えて、
- 意識がぼんやりする
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 言動が普段と違う
- けいれんする
- 手足の麻痺などが出る
といった症状が目立つ場合には、脳炎や髄膜脳炎も考える必要があります。
もちろん、重症の髄膜炎でも意識障害が起こることはあります。
いずれにしても、意識障害やけいれんを伴う場合は緊急性が高いため、すぐに救急医療機関を受診してください。
脳炎については、別の記事で詳しく解説します。
こんな症状があれば早めに受診を
発熱や頭痛があっても、すべてが髄膜炎というわけではありません。
ただし、次のような場合には自宅で長く様子をみず、医療機関を受診してください。
- 発熱と強い頭痛がある
- 頭痛がどんどん強くなっている
- 何度も嘔吐する
- 首が痛くて前に曲げにくい
- 光を非常にまぶしく感じる
- 熱と頭痛のわりに、咳や鼻水などの風邪症状がほとんどない
- いつもの風邪や頭痛と明らかに違う
- 症状が急速に悪化している
さらに、
- 意識がぼんやりしている
- 呼びかけても反応がおかしい
- けいれんが起きた
- 手足が動かしにくい
などの症状がある場合には、救急受診が必要です。
髄膜炎はどうやって診断する?
髄膜炎が疑われる場合には、まず症状や経過を確認し、神経学的な診察を行います。
そのうえで、
- 血液検査
- 髄液検査
- CT
- MRI
などを必要に応じて行います。
中でも髄膜炎の診断に重要なのが、髄液検査です。
髄液検査(腰椎穿刺)とは?
髄液とは、脳や脊髄のまわりを満たしている液体です。
髄膜炎が疑われた場合には、腰のあたりから細い針を入れて髄液を採取する**腰椎穿刺(ようついせんし)**という検査を行うことがあります。
採取した髄液から、
- 炎症細胞が増えていないか
- 蛋白や糖に変化がないか
- 細菌やウイルスなどの病原体がいないか
などを調べます。
「背中に針を刺す」と聞くと怖く感じる方もいると思いますが、髄膜炎の原因を調べ、適切な治療につなげるために非常に重要な検査です。
CTやMRIだけではわからないの?
「頭痛ならMRIを撮れば髄膜炎もわかるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、髄膜炎は脳そのものの形の異常をみる病気ではないため、CTやMRIだけで髄膜炎を診断できるとは限りません。
画像検査は、
- ほかの脳の病気が隠れていないか
- 脳炎などを合併していないか
- 腰椎穿刺を行う前に画像評価が必要な状態ではないか
などを判断するために行われることがあります。
髄膜炎そのものの診断では、症状や診察所見とともに髄液検査が重要です。
髄膜炎の治療
治療方法は原因によって異なります。
細菌性髄膜炎
細菌性髄膜炎が疑われる場合には、できるだけ早く抗菌薬を開始することが重要です。
重症化する可能性があるため、基本的には入院して治療します。
状態によってはステロイドなどを併用することもあります。
ウイルス性髄膜炎
ウイルス性髄膜炎では、原因となるウイルスによって治療が異なります。
比較的軽症の場合には、
- 安静
- 水分補給
- 解熱鎮痛薬
などによる対症療法を行いながら改善を待つこともあります。
一方、原因となるウイルスによっては抗ウイルス薬などの治療が必要になる場合があります。
髄膜炎は人にうつるの?
髄膜炎だから必ず人にうつる、というわけではありません。
感染するかどうかは原因によって異なります。
ウイルスや細菌の中には人から人へ感染するものもありますが、「髄膜炎」という状態そのものが、そのまま周囲の人にうつるわけではありません。
原因となった病原体によっては、家族など濃厚に接触した人に予防的な対応が必要になる場合もあります。
髄膜炎と診断された場合には、周囲の人への対応についても主治医の指示を受けてください。
「頭痛+発熱」は我慢しすぎないことが大切
頭痛や発熱は日常的によくみられる症状なので、少し頭が痛いだけで髄膜炎を心配する必要はありません。
一方で、
「熱があって頭痛がかなり強い」
「熱と頭痛はあるのに、咳や鼻水などの風邪症状があまりない」
「いつもの風邪とは明らかに違う」
「首が動かしにくい」
といった場合には、一度医療機関で診てもらうことが大切です。
また、発熱や頭痛に加えて意識障害やけいれんなどがある場合には、脳炎などの可能性もあるため、救急受診してください。
まとめ
髄膜炎は、脳や脊髄を包んでいる髄膜に炎症が起こる病気です。
代表的な症状は、
- 発熱
- 強い頭痛
- 嘔吐
- 首の硬さ
- 光をまぶしく感じる
などです。
また、一般的な風邪と比べて、発熱や強い頭痛のわりに、咳・鼻水・のどの痛みなどの呼吸器症状が目立たないこともあります。
特に細菌性髄膜炎は急速に悪化することがあるため、早期の診断と治療が重要です。
ただし、発熱や頭痛があるからといって、すべて髄膜炎というわけではありません。
大切なのは、
「いつもの風邪や頭痛とは違う」
「強い頭痛と発熱が一緒にある」
「症状がどんどん悪化している」
といった変化を見逃さないことです。
意識障害やけいれんを伴う場合には脳炎なども考える必要があるため、すぐに救急医療機関を受診してください。
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