MCI(軽度認知障害)とは?認知症との違いを神経内科専門医が解説
はじめに
「最近もの忘れが増えた気がする」
「認知症ではないか心配」
「病院で検査を受けたけれど、認知症ではないと言われた」
そんな不安を抱えて受診される方は少なくありません。
実は認知症と正常な加齢によるもの忘れの間には、**MCI(軽度認知障害)**と呼ばれる状態があります。
今回はMCIについて、認知症との違いや受診の目安をわかりやすく解説します。
MCI(軽度認知障害)とは?
MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)は、
認知症ではないものの、年齢相応以上の認知機能の低下がみられる状態
を指します。
物忘れなどの症状はありますが、
- 買い物
- 金銭管理
- 服薬管理
- 家事
などの日常生活はおおむね自立して行えます。
こんなことはありませんか?
- 人の名前がなかなか出てこない
- 同じ話を繰り返してしまう
- 予定を忘れることが増えた
- 探し物が増えた
- メモを取る機会が増えた
一方で、
- 一人で買い物に行ける
- お金の管理ができる
- 薬を自分で飲める
- 趣味を楽しめる
という状態であれば、MCIの可能性があります。
MCIと認知症の違い
| MCI | 認知症 | |
|---|---|---|
| 物忘れ | ある | ある |
| 本人の自覚 | 比較的ある | 乏しいことが多い |
| 日常生活 | ほぼ自立 | 支障が出る |
| 金銭管理 | できる | 難しくなる |
| 服薬管理 | できる | 難しくなる |
| 買い物 | できる | 難しくなる |
認知症の診断では、検査の点数だけでなく、
「日常生活に支障が出ているかどうか」
がとても重要です。
加齢によるもの忘れとの違い
加齢によるもの忘れ
出来事そのものは覚えています。
例)
「昨日の夕食は何だったかな?」
ヒントがあれば思い出せます。
MCI
出来事は覚えているものの、内容が思い出しにくくなります。
例)
「昨日何を食べたっけ?」
認知症
出来事そのものを忘れてしまいます。
例)
「まだご飯を食べていない」
認知症外来ではよく説明される違いです。
MCIはどのように診断するの?
認知機能を調べる検査として、
- HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
- MMSE(Mini-Mental State Examination)
などがよく用いられます。
一般的には、
- HDS-R 20点以下
- MMSE 23点以下
で認知機能低下が疑われます。
しかし、MCIでは検査結果がほぼ正常範囲のことも少なくありません。
例えば、
- HDS-R 25〜29点
- MMSE 26〜29点
程度でも、詳しく評価するとMCIが見つかることがあります。
そのため、
MCIや認知症の診断は検査の点数だけでは決まりません。
本人の症状や家族からの情報、日常生活の状況などを総合的に判断します。
神経内科外来での実際
私は普段の外来で、
「MCIですね」
と説明することはそれほど多くありません。
実際には、
今のところ認知症ではありません
少し物忘れはありますが、日常生活はしっかりできていますね
困ることが増えたらまた相談してください
という説明をすることが多いです。
MCIは認知症ではありません。
しかし、将来的な変化に気付くためにも、定期的な経過観察は大切です。
MCIの原因
MCIの背景にはさまざまな病気が隠れていることがあります。
アルツハイマー病
最も多い原因です。
認知症になる前段階としてMCIの状態がみられることがあります。
脳梗塞や脳血管障害
小さな脳梗塞が積み重なることで認知機能が低下することがあります。
レビー小体病
初期には、
- 物忘れ
- 注意力低下
- レム睡眠行動障害
などがみられることがあります。
うつ病
集中力や意欲の低下により、もの忘れのように見えることがあります。
睡眠障害
- 不眠症
- 睡眠時無呼吸症候群
なども認知機能低下の原因になります。
MCIと診断されたら認知症になるの?
必ず認知症になるわけではありません。
中には改善する方もいます。
一方で、認知症へ進行する方がいることも知られています。
そのため、
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- 人との交流
- 高血圧や糖尿病の管理
などが大切です。
こんなときは脳神経内科へ相談を
- 物忘れが急に増えた
- 家族から指摘されることが増えた
- 同じ話を繰り返す
- 金銭管理に自信がなくなった
- 薬の飲み忘れが増えた
- 運転が不安になった
このような場合は、一度相談してみましょう。
まとめ
- MCIは認知症と正常の中間にある状態
- 日常生活は保たれていることが多い
- 認知症ではないが経過観察が大切
- 検査の点数だけでは診断できない
- 気になる物忘れは早めに脳神経内科へ相談を
