認知症の種類

前頭側頭型認知症(FTLD)とは?性格が変わる・怒りっぽい・こだわりが強くなる認知症

脳と神経の相談室

はじめに

「最近、人が変わったように怒りっぽくなった」

「何を言っても拒否するようになった」

「同じことばかり繰り返している」

「認知症と言われたけれど、物忘れはそれほど目立たない」

このような症状がある場合、前頭側頭型認知症(FTLD)の可能性があります。

アルツハイマー型認知症では物忘れが中心ですが、前頭側頭型認知症では性格や行動の変化が目立つことが特徴です。

周囲からは「わがままになった」「頑固になった」「性格が悪くなった」と見えてしまうこともあり、家族が最も対応に苦労する認知症の一つです。


前頭側頭型認知症(FTLD)とは

脳の前頭葉や側頭葉が徐々に萎縮する病気です。

特に前頭葉には、

  • 感情をコントロールする
  • 社会的な判断をする
  • 物事を順序立てて考える
  • 計画を立てる
  • 衝動を抑える

といった重要な役割があります。

そのため障害されると、

  • 性格が変わる
  • 怒りっぽくなる
  • 頑固になる
  • こだわりが強くなる
  • 社会的なルールを守れなくなる

といった症状が現れます。

また、

  • 料理の手順が考えられない
  • 家事の段取りが組めない
  • 複数の作業を同時に進められない

といった変化がみられることもあります。


どんな人に多い?

認知症の中では比較的まれです。

アルツハイマー型認知症より若い年代で発症することが多く、

  • 50〜70代

でみられることが多い病気です。


前頭側頭型認知症の主な症状

性格が変わる

家族が最初に気付くことが多い症状です。

例えば、

  • 怒りっぽくなる
  • 思いやりがなくなる
  • 配慮がなくなる
  • 空気が読めなくなる
  • 自己中心的になる

といった変化がみられます。

本人には病識が乏しいことが多く、

「自分は何も変わっていない」

と思っていることも少なくありません。


何でも拒否するようになる

家族が非常に困る症状です。

例えば、

  • 入浴しない
  • 病院に行かない
  • デイサービスに行かない
  • 薬を飲まない

など、何を勧めても拒否するようになることがあります。

また、

  • 自分の失敗を認めない
  • できなくなったことを認めない
  • 間違いを指摘すると怒る

といった頑固さも目立ちます。

家族との衝突が増えやすい症状です。


こだわりが強くなる

非常に特徴的な症状です。

例えば、

  • 毎日同じ服を着る
  • 毎日同じ時間に同じ行動をする
  • 同じ店ばかり利用する
  • 家具の配置を変えられるのを嫌がる

などがみられます。

予定の変更を極端に嫌がることもあります。


同じ行動を繰り返す

  • 同じ話を何度もする
  • 同じ場所へ行く
  • 同じ作業を延々と続ける

などの常同行動がみられることがあります。


食行動の変化

前頭側頭型認知症では食行動の異常も特徴的です。

  • 甘いものばかり食べる
  • 同じものばかり食べる
  • 食べ過ぎる
  • 一気に口へ詰め込む
  • 満腹でも食べ続ける

などの症状がみられることがあります。


社会的なルールが守れなくなる

前頭葉の機能低下により、衝動を抑えられなくなることがあります。

例えば、

  • 高額な買い物を繰り返す
  • 必要のない物を大量に購入する
  • ギャンブルにお金を使う
  • 万引きをしてしまう
  • 会計前の商品を食べてしまう
  • 他人との距離感が近くなる
  • 初対面でも手を握る
  • 不適切な発言をする
  • 人前で服を脱いでしまう

などがみられることがあります。

本人に悪気はなく、

「なぜ注意されているのか分からない」

ことも少なくありません。


何もしなくなる(アパシー)

一見すると、うつ病のように見えることがあります。

  • 一日中座っている
  • テレビばかり見ている
  • 趣味をやめる
  • 家事をしなくなる
  • 外出しなくなる

といった症状がみられます。

本人は落ち込んでいるというより、

「やる気そのものが出ない」

状態になっています。


物忘れは目立たないこともある

初期には、

  • 家族の名前
  • その日の出来事
  • 最近の会話

などを比較的覚えていることがあります。

そのため、

「認知症には見えない」

と言われることも少なくありません。


言葉が出にくくなるタイプもある

前頭側頭型認知症の中には、

原発性進行性失語(PPA)

と呼ばれるタイプがあります。

  • 言葉が出てこない
  • 物の名前が分からない
  • 言葉の意味が分からない
  • 会話が成立しにくくなる

といった症状が中心になります。


ALS(筋萎縮性側索硬化症)を伴うこともある

前頭側頭型認知症の一部では、

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

を合併することがあります。

  • 手足の筋力低下
  • 筋肉がやせる
  • 歩きにくくなる

などの症状が加わることがあります。


どんな検査をする?

診察

家族からの情報が非常に重要です。

本人には病識が乏しいことが多く、

症状を自覚していないことも少なくありません。


頭部MRI

前頭葉や側頭葉の萎縮を確認します。


脳血流シンチグラフィー(SPECT)

前頭葉や側頭葉の機能低下がみられることがあります。


病院受診を拒否することも少なくない

前頭側頭型認知症では、

「自分は病気ではない」

と考えていることが多く、受診そのものを拒否することがあります。

家族だけで説得しようとせず、

  • 地域包括支援センター
  • ケアマネジャー
  • 介護サービス

などへ早めに相談することが大切です。


徘徊や問題行動につながることもある

病気が進行すると、

  • 勝手に外へ出ていく
  • 毎日同じ場所へ行く
  • 家族の制止を聞かない

といった行動がみられることがあります。

無理に止めようとすると、

  • 暴言
  • 興奮
  • 暴力

につながることもあります。

家族だけで対応することが難しい場合は、

  • 介護サービス
  • ケアマネジャー
  • 地域包括支援センター
  • 精神科

などと連携して支援を受けることが重要です。

場合によっては入院治療が必要になることもあります。


治療

残念ながら根本的に治す治療法はありません。

しかし、

  • 興奮
  • 易怒性
  • 行動異常

などに対して薬を使用することがあります。

また、

環境調整や介護サービスの利用が非常に重要になります。


家族が困りやすいポイント

アルツハイマー型認知症では

「覚えられない」

ことが中心です。

一方、前頭側頭型認知症では、

  • 怒る
  • 拒否する
  • 頑固になる
  • 同じ行動を繰り返す
  • 社会的なルールが守れなくなる

ことが目立ちます。

そのため家族の精神的負担が非常に大きい認知症です。

本人の性格の問題ではなく、脳の病気による変化であることを理解することが大切です。


こんな症状があれば脳神経内科へ

  • 急に性格が変わった
  • 怒りっぽくなった
  • 何でも拒否するようになった
  • こだわりが強くなった
  • 同じ行動ばかり繰り返す
  • 社会的なルールが守れなくなった
  • 言葉が出にくくなった

このような症状が続く場合は、脳神経内科へ相談しましょう。


まとめ

前頭側頭型認知症(FTLD)は、物忘れよりも性格や行動の変化が目立つ認知症です。

  • 怒りっぽくなる
  • 頑固になる
  • 何でも拒否する
  • こだわりが強くなる
  • 食行動が変わる
  • 社会的なルールが守れなくなる

といった症状が特徴です。

周囲からは「性格が変わった」「わがままになった」と見えてしまうことがありますが、本人の性格ではなく脳の病気による症状です。

早めに脳神経内科へ相談し、介護サービスも活用しながら本人と家族を支えていくことが大切です。


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神経内科専門医・総合内科専門医
はじめまして。「脳と神経の相談室」を運営している女医です。 神経内科専門医・総合内科専門医として15年以上診療に携わっています。 外来でよくいただく質問を中心に、しびれ、頭痛、めまい、認知症などについて、専門的な内容をできるだけわかりやすく解説します。 不安を少しでも減らし、受診のきっかけになるような情報発信を心がけています。
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