パーキンソン病とは?初期症状・歩き方・検査・治療を脳神経内科専門医がわかりやすく解説
「最近、歩くのが遅くなった」
「片方の手だけ震える」
「表情が少なくなったと言われた」
「字が以前より小さくなった」
このような変化から、パーキンソン病が見つかることがあります。
パーキンソン病というと「手が震える病気」というイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、
- 動作が遅くなる
- 歩幅が小さくなる
- 片方の腕を振らなくなる
- 声が小さくなる
- 表情が乏しくなる
- 筋肉がこわばる
- 字が小さくなる
など、さまざまな症状がみられます。
また、便秘や嗅覚低下、睡眠中の大きな寝言などが、運動症状より何年も前から現れることもあります。
この記事では、パーキンソン病の初期症状、特徴的な歩き方、検査、治療について、脳神経内科専門医がわかりやすく解説します。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳の「黒質」という部分にあるドパミンを作る神経細胞が徐々に減少することで起こる神経変性疾患です。
ドパミンは、体をスムーズに動かすために重要な神経伝達物質です。
ドパミンが不足すると、
- 動作が遅くなる
- 筋肉がこわばる
- 手足が震える
- 歩きにくくなる
などの症状が現れます。
高齢になるほど発症する人が増え、65歳以上では約100人に1人程度とされています。
国の「指定難病」に含まれていますが、決して非常に珍しい病気ではありません。
現在のところ病気そのものを完全に治す治療法はありませんが、薬やリハビリテーションなどによって症状を改善し、生活機能を長く保つことができます。
パーキンソン病の初期症状
パーキンソン病は、突然症状が完成する病気ではありません。
少しずつ、
「何となく動きが悪くなった」
「以前より歩くのが遅くなった」
という変化から始まることが多い病気です。
特に重要なのが、最初は左右どちらか一方に症状が強く出ることが多いという点です。
例えば、
- 右手だけ震える
- 左腕を振らなくなる
- 片側だけ肩がこる
- 片足だけ引きずる
- 片手だけ細かい作業がしにくい
といった形で始まることがあります。
また、五十肩のような肩の痛みやこわばりが先に現れ、その後にパーキンソン病と診断される方もいます。
パーキンソン病の主な運動症状
① 動作緩慢|動きが遅くなる
パーキンソン病を診断するときに非常に重要な症状が「動作緩慢」です。
単にゆっくり動くというだけでなく、動作を繰り返すうちに動きが小さくなったり、ぎこちなくなったりします。
日常生活では、
- 着替えに時間がかかる
- ボタンをかけにくい
- 歯磨きに時間がかかる
- 財布から小銭を出しにくい
- 字が小さくなる
- 声が小さくなる
- 表情が乏しくなる
- 寝返りがしにくい
- 椅子から立ち上がるのに時間がかかる
などとして現れます。
家族から、
「最近何をするにも時間がかかる」
「以前より表情がなくなった」
と指摘されて受診されることもあります。
② 安静時振戦|何もしていないときに手が震える
パーキンソン病では、何もしていないときに目立つ「安静時振戦」が特徴的です。
例えば、
- テレビを見ているとき
- 椅子に座っているとき
- 手を膝の上に置いているとき
- 歩いているとき
などに手が震えます。
一方で、物を取ったり手を動かしたりすると、震えが一時的に小さくなることがあります。
親指と人差し指で丸薬を転がしているように見えることから、「丸薬丸め様振戦」と呼ばれる震えがみられることもあります。
また、最初は左右どちらか一方の手だけに現れることが少なくありません。
なお、パーキンソン病だからといって必ず手が震えるわけではありません。
震えがほとんどなく、動作の遅さや歩きにくさだけで発症する方もいます。
手の震えにはパーキンソン病以外にもさまざまな原因があります。
▶︎ 手の震えの原因について詳しくはこちら
③ 筋強剛|筋肉がこわばる
筋強剛とは、筋肉の緊張が強くなり、医師が腕や足を動かしたときに抵抗を感じる状態です。
患者さん自身は、
- 肩がこる
- 首がこる
- 背中が硬い
- 腰が痛い
- 体が動かしにくい
と感じることがあります。
特に片側の肩の痛みやこわばりが初期症状になることがあります。
そのため、最初は整形外科を受診し、
「五十肩かな?」
と思って治療していたものの、後から手の震えや歩きにくさが出てパーキンソン病とわかることもあります。
パーキンソン病に特徴的な歩き方
パーキンソン病では歩き方にも特徴が現れます。
代表的なのは、
- 歩幅が小さくなる
- 足をすって歩く
- 腕を振らなくなる
- 前かがみになる
- 歩き始めの一歩が出にくい
- 方向転換に時間がかかる
- 狭い場所で足が止まる
といった変化です。
最初は片方の腕だけ振らなくなることもあります。
病気が進むと、足が床にくっついたようになって一歩が出なくなる「すくみ足」がみられることがあります。
特に、
- 歩き始め
- 方向転換
- 狭い場所
- エレベーターへの乗り降り
などで起こりやすくなります。
▶︎ 歩きにくい・ふらつく原因について詳しくはこちら
転びやすさは初期症状とは限りません
パーキンソン病では、進行するとバランスを立て直す力が低下し、転倒しやすくなることがあります。
これを「姿勢保持障害」といいます。
ただし、姿勢保持障害は一般的に病気がある程度進行してから目立つ症状です。
そのため、
発症して間もない時期から何度も転倒する
場合には、パーキンソン病だけでなく、
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- 多系統萎縮症(MSA)
- その他のパーキンソン症候群
なども考える必要があります。
手足の症状より先に現れることも|非運動症状
パーキンソン病は「運動の病気」だけではありません。
さまざまな非運動症状がみられます。
便秘
パーキンソン病では自律神経の働きが低下し、便秘が起こりやすくなります。
手の震えなどが出る何年も前から便秘が続いていることもあります。
嗅覚低下
「以前より匂いがわからなくなった」
という嗅覚の低下も比較的早い段階からみられる症状です。
レム睡眠行動異常症
睡眠中に、
- 大きな寝言を言う
- 叫ぶ
- 手足を激しく動かす
- 誰かと戦っているような動きをする
ことがあります。
これを「レム睡眠行動異常症」と呼びます。
パーキンソン病の運動症状が出るかなり前からみられることもあります。
むずむず脚症候群
パーキンソン病では、夜になると脚がむずむずしたり、じっとしていられなくなったりする「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」を伴うことがあります。
特に、
- 夜や安静時に脚の不快感が強くなる
- 脚を動かすと楽になる
- 寝つきが悪くなる
といった症状が特徴です。
パーキンソン病そのものによる睡眠障害だけでなく、むずむず脚症候群が睡眠を妨げていることもあります。
▶︎ むずむず脚症候群について詳しくはこちら
その他の非運動症状
このほか、
- 立ちくらみ
- 頻尿
- 発汗異常
- 疲れやすさ
- うつ
- 意欲低下
- 睡眠障害
- 痛み
- 認知機能低下
- 幻視
など、さまざまな症状が起こることがあります。
パーキンソン病と間違えやすい病気
手の震えや歩きにくさがあっても、すべてがパーキンソン病とは限りません。
似た症状を起こす病気があります。
本態性振戦
本態性振戦では、コップを持つ、字を書くなど「手を使っているとき」に震えが目立つ傾向があります。
一方、パーキンソン病では何もしていないときの震えが特徴的です。
▶︎ 本態性振戦について詳しくはこちら
薬剤性パーキンソニズム
一部の抗精神病薬や吐き気止めなどによって、
- 動作緩慢
- 筋肉のこわばり
- 歩行障害
などのパーキンソン症状が出ることがあります。
診察では、現在服用している薬を確認することも非常に重要です。
正常圧水頭症
正常圧水頭症では、
- 歩行障害
- 認知機能低下
- 尿失禁
が特徴的です。
治療可能な病気であるため、パーキンソン病との区別が重要です。
▶︎ 正常圧水頭症について詳しくはこちら
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症でも、
- 動作緩慢
- 筋肉のこわばり
- 歩行障害
- 手の震え
などのパーキンソン症状がみられます。
さらに、
- 幻視
- 認知機能の変動
- レム睡眠行動異常症
などを伴うことが特徴です。
▶︎ レビー小体型認知症について詳しくはこちら
パーキンソン病の検査
パーキンソン病には、
「この検査が陽性ならパーキンソン病」と確定できる単独の検査はありません。
もっとも重要なのは、
- どのように症状が始まったか
- 左右差があるか
- どのような歩き方をしているか
- 筋肉のこわばりがあるか
- 動作を繰り返したときに動きが小さくなるか
などを脳神経内科医が診察することです。
必要に応じて次のような検査を行います。
頭部MRI
脳梗塞、正常圧水頭症、脳腫瘍など、パーキンソン症状を起こす別の病気がないか確認します。
パーキンソン病そのものでは、通常のMRIで明らかな異常がみられないことも少なくありません。
DAT-SPECT(ダットスキャン)
脳内のドパミン神経の状態を評価する核医学検査です。
パーキンソン病の診断を補助する目的で行われます。
ただし、DAT-SPECTだけでパーキンソン病と他の神経変性疾患を完全に区別できるわけではありません。
心筋MIBGシンチグラフィ
心臓の交感神経機能を調べる検査です。
パーキンソン病やレビー小体型認知症では低下することがあり、診断の補助として用いられます。
検査結果だけで診断するのではなく、症状や診察所見を合わせて判断します。
パーキンソン病の治療
パーキンソン病の治療は、患者さんの年齢、症状、生活スタイルなどを考えながら調整します。
レボドパ製剤
パーキンソン病治療の中心となる薬です。
脳内で不足しているドパミンを補うことで、
- 動作緩慢
- 筋強剛
- 歩行障害
などを改善します。
その他の抗パーキンソン病薬
症状や経過に応じて、
- ドパミンアゴニスト
- MAO-B阻害薬
- COMT阻害薬
- ゾニサミド
- イストラデフィリン
- アマンタジン
などを組み合わせることがあります。
薬は患者さんによって効果や副作用が異なるため、脳神経内科で調整することが重要です。
リハビリや運動も大切です
パーキンソン病では薬だけでなく、運動を続けることも非常に重要です。
例えば、
- 大きく手足を動かす
- 歩幅を意識して歩く
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- バランス練習
- 発声練習
などを行います。
体を動かさない期間が長くなると、筋力や体力が低下し、さらに動きにくくなる悪循環につながります。
無理のない範囲で運動を続けることが大切です。
病気が進んだ場合の治療
病気が進行すると、薬が効いている時間と効いていない時間がはっきりする「ウェアリングオフ」や、体が勝手に動く「ジスキネジア」がみられることがあります。
内服薬だけでは症状のコントロールが難しくなった場合には、
- 脳深部刺激療法(DBS)
- レボドパ製剤の持続投与
などのデバイス治療が検討されることもあります。
どの治療が適しているかは、症状、年齢、認知機能、生活状況などによって異なります。
パーキンソン病になりやすい性格はある?
「真面目な人や几帳面な人はパーキンソン病になりやすい」
という話を聞くことがあります。
過去にはパーキンソン病の患者さんに一定の性格傾向がみられるという報告もありますが、性格がパーキンソン病の原因になるわけではありません。
性格からパーキンソン病を予測したり、診断したりすることはできません。
こんな症状があれば脳神経内科へ
次のような変化が続く場合には、一度脳神経内科へ相談してみることをおすすめします。
- 何もしていないときに片手が震える
- 片方の腕を振らなくなった
- 歩幅が以前より小さくなった
- 足をするようになった
- 動作が全体的に遅くなった
- 着替えに時間がかかるようになった
- 字が以前より小さくなった
- 声が小さくなった
- 表情が乏しくなった
- 肩や体の片側がこわばる
本人よりも家族が先に変化に気づくことも少なくありません。
「年齢のせい」と思い込まず、症状が続く場合には脳神経内科で相談してみましょう。
まとめ
パーキンソン病は「手が震える病気」だけではありません。
初期には、
- 片側の手の震え
- 動作の遅さ
- 片腕を振らなくなる
- 歩幅が小さくなる
- 字が小さくなる
- 声が小さくなる
- 肩や体のこわばり
など、さまざまな変化が現れます。
さらに便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動異常症などが、運動症状より前からみられることもあります。
現在のところ病気そのものを完全に治す治療法はありませんが、薬物療法、リハビリテーション、必要に応じたデバイス治療などを組み合わせることで、症状をコントロールしながら生活を続けることができます。
パーキンソン病は、症状や診察所見から診断することが非常に重要な病気です。
気になる変化が続く場合には、脳神経内科へ相談してください。
