正常圧水頭症とは?歩きにくい・物忘れ・尿もれが特徴の「治療できる認知症」
はじめに
最近、
- 歩くのが遅くなった
- 転びやすくなった
- 物忘れが増えた
- トイレが近くなった
このような症状があると、「年齢のせいかな」「認知症かもしれない」と心配になる方も多いでしょう。
実はその原因が正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)という病気のことがあります。
正常圧水頭症は、脳や脊髄の周りを流れている「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という液体がうまく排出されなくなり、脳の中に少しずつ溜まることで起こる病気です。
脳脊髄液は脳を守るクッションの役割をしていますが、排出のバランスが崩れると脳の中の「脳室(のうしつ)」という空間が広がり、周囲の脳が圧迫されてさまざまな症状が現れます。
神経内科では比較的よく遭遇する病気で、適切に診断できれば治療による改善が期待できることもあります。
正常圧水頭症とは?
脳の中では毎日脳脊髄液が作られ、吸収されています。
ところが加齢やさまざまな原因によって吸収がうまくいかなくなると、脳脊髄液が徐々に溜まり、脳室が拡大していきます。
その結果、
- 歩きにくい
- 物忘れ
- 尿失禁
といった症状が出現します。
60〜80代に多くみられ、認知症やパーキンソン病と間違われることも少なくありません。
正常圧水頭症の代表的な症状
① 歩きにくくなる
正常圧水頭症で最も特徴的なのが歩行障害です。
よくみられる症状として、
- 小股歩行
- 歩く速度が遅い
- 歩き始めに時間がかかる
- 足が床に貼り付いたようになる
- 方向転換でふらつく
- 転びやすい
などがあります。
「筋力はあるのにうまく歩けない」という状態が特徴です。
多くの場合、物忘れよりも先に歩きにくさが目立つようになります。
② 物忘れや認知機能の低下
正常圧水頭症では認知機能の低下もみられます。
- 反応が遅くなる
- ボーっとしている
- 意欲が低下する
- 会話が少なくなる
などが代表的です。
ただし、アルツハイマー型認知症のように強い記憶障害が目立たないこともあります。
③ 尿失禁・頻尿
正常圧水頭症では、
- トイレが近くなる
- 尿意を我慢しにくくなる
- 間に合わず失禁してしまう
といった症状もみられます。
高齢になるとよくある症状のため、見逃されることも少なくありません。
アルツハイマー型認知症との違い
正常圧水頭症とアルツハイマー型認知症は似ている部分がありますが、大きな違いがあります。
正常圧水頭症
- 歩きにくさが早い段階から目立つ
- 転びやすい
- 小股歩行になる
- 物忘れは比較的軽いことも多い
アルツハイマー型認知症
- 記憶障害から始まることが多い
- 同じことを何度も聞く
- 約束を忘れる
- 歩行障害は比較的後期に出現する
そのため、
「物忘れよりも先に歩きにくくなった」
という場合には正常圧水頭症の可能性も考えます。
レビー小体型認知症との違い
レビー小体型認知症では、
- 幻視
- パーキンソン症状
- 症状の日内変動
などが特徴です。
正常圧水頭症では通常、幻視はみられません。
どのような検査をするの?
MRI検査
MRIでは脳の中の脳室が広がっている様子を確認します。
ただしMRIだけで診断が確定するわけではありません。
症状や歩き方、タップテストの結果などを総合して診断します。
タップテスト
タップテストは腰から脳脊髄液を抜き、症状が改善するかを確認する検査です。
外来で行う施設もありますし、入院して詳しく評価する施設もあります。
検査後に
- 歩く速度が速くなった
- 歩幅が広くなった
- 立ち上がりやすくなった
などの改善がみられることがあります。
ただし改善は一時的で、多くは当日から翌日程度までで、その後は徐々に元の状態へ戻ります。
治療は?
シャント手術
正常圧水頭症では、余分な脳脊髄液を体の別の場所へ流すシャント手術が行われます。
代表的なものとして、
- VPシャント
- LPシャント
があります。
すべての人が手術できるわけではありません
正常圧水頭症は「治療できる認知症」として知られています。
しかし実際には、
- 高齢である
- パーキンソン病を合併している
- 脳梗塞後遺症がある
- 他の認知症を合併している
などの場合もあり、慎重な判断が必要です。
また、MRIで正常圧水頭症らしく見えても、実際には別の病気が主な原因となっていることもあります。
そのため、神経内科や脳神経外科で総合的に評価した上で手術の適応を判断します。
こんな症状があれば脳神経内科へ
- 歩きにくくなった
- 転びやすくなった
- 物忘れが増えた
- トイレが近くなった
- 尿失禁が出てきた
このような症状がある場合は、一度脳神経内科へ相談してみましょう。
まとめ
- 正常圧水頭症は高齢者に多い病気
- 歩行障害・認知機能低下・尿失禁が特徴
- 特に歩きにくさが早期から目立つことが多い
- タップテストやMRIで診断を進める
- シャント手術で改善が期待できる場合がある
- 「年齢のせい」と決めつけず、気になる症状があれば相談を
