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手足に力が入らない原因は?突然・片側なら脳梗塞に注意【脳神経内科専門医が解説】

脳と神経の相談室

「急に片手に力が入らなくなった」

「最近、ペットボトルのふたが開けにくい」

「階段を上ると足に力が入らない」

「朝は大丈夫なのに、夕方になると腕がだるくなる」

このような「力が入らない」という症状には、さまざまな原因があります。

単なる疲労のこともありますが、脳梗塞や脊髄の病気、末梢神経の病気、筋肉の病気などが隠れていることもあります。

特に、突然、片側の手足に力が入らなくなった場合は脳卒中の可能性があるため注意が必要です。

この記事では、手足に力が入らない原因と、症状の出方による見分け方、何科を受診すればよいかについて、脳神経内科専門医がわかりやすく解説します。


まず確認したい|「力が入らない」と「全身がだるい」は少し違います

患者さんが「力が入らない」と表現する症状には、大きく分けて2つあります。

本当に筋力が低下している場合

例えば、

  • ペットボトルのふたが開けられない
  • 箸をうまく使えない
  • 腕を上げられない
  • 椅子から立ち上がれない
  • 階段を上れない
  • つま先が上がらず、よくつまずく

といった症状です。

医学的には、このような状態を**筋力低下(麻痺)**と呼びます。

脳、脊髄、末梢神経、神経と筋肉のつなぎ目、筋肉などの異常で起こります。

「全身がだるい」「体に力が入らない」という場合

一方、

「風邪をひいたときのように全身がだるい」

「立つことはできるけれど体に力が入らない感じがする」

という場合には、

  • 感染症
  • 貧血
  • 脱水
  • 低血糖
  • 電解質異常
  • 甲状腺機能異常
  • 睡眠不足や強い疲労

など、神経以外の原因も考えます。

この場合は、まず内科で相談してもよいでしょう。


突然、片側の手足に力が入らない場合は脳卒中に注意

「さっきまで普通だったのに、突然右手に力が入らなくなった」

このような場合、最も注意しなければならないのが脳梗塞や脳出血などの脳卒中です。

脳卒中では、

  • 片側の腕や足に力が入らない
  • 片側の顔が動かしにくい
  • 片側の手足がしびれる
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出にくい
  • 人の話が理解しにくい
  • 急に歩けなくなる
  • 物が二重に見える

などの症状が突然起こります。

特に、

「突然」「片側」

という組み合わせは非常に重要です。

一度症状がよくなった場合でも、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。

「治ったから大丈夫」と様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。

▶︎ 脳梗塞の前兆について詳しくはこちら


症状の出方から考えられる原因

「力が入らない」といっても、症状の出方によって考えやすい病気は異なります。

症状の特徴考えられる病気
突然、片側の手足に力が入らない脳梗塞・脳出血
高齢者で数週間かけて歩きにくくなった慢性硬膜下血腫など
首や肩が痛く、手が使いにくい頚椎症・頚椎椎間板ヘルニア
強い肩の痛みのあと腕が上がらない神経痛性筋萎縮症
風邪や胃腸炎のあと両足から弱くなるギラン・バレー症候群
両足の筋力低下としびれ、排尿障害脊髄炎など
椅子から立てない・腕を上げにくい筋炎など筋肉の病気
使っているうちに力が続かなくなる重症筋無力症
徐々に筋力低下し、筋肉がやせるALSなど

それぞれ詳しくみていきます。


脳梗塞・脳出血

手足に力が入らなくなったとき、まず見逃してはいけない病気です。

脳梗塞や脳出血では、多くの場合、

  • 右半身
  • 左半身

というように体の片側に症状が出ます。

例えば、

「右手だけ急に箸が持てなくなった」

「左足が急に動かなくなった」

「右手と右足が同時に動かしにくくなった」

という症状です。

顔のゆがみやろれつ障害を伴っていれば、さらに脳卒中を疑います。

突然このような症状が出た場合には、時間を置いて様子を見るのではなく、救急受診を考えてください。


高齢者で徐々に力が入らなくなったら慢性硬膜下血腫も

高齢の方では、慢性硬膜下血腫によって片側の手足が動かしにくくなることがあります。

慢性硬膜下血腫は、転倒や軽い頭部打撲などをきっかけに、脳と硬膜の間にゆっくり血液がたまる病気です。

特徴は、脳卒中のように突然ではなく、

  • 最近歩くのが遅くなった
  • 片足を引きずる
  • 片手が使いにくい
  • 物忘れが急に増えた
  • 以前より反応が鈍くなった

などの症状が、数週間から数か月かけて目立ってくることです。

本人が頭をぶつけたことを覚えていない場合もあります。

▶︎ 慢性硬膜下血腫について詳しくはこちら


頚椎症・頚椎椎間板ヘルニア

首の神経や脊髄が圧迫されることで、手足に力が入りにくくなることがあります。

よくみられる症状は、

  • 首や肩の痛み
  • 手や腕のしびれ
  • 指先が動かしにくい
  • 箸が使いにくい
  • ボタンをかけにくい
  • 字が書きにくい

などです。

脊髄まで圧迫されると、

  • 両手が使いにくくなる
  • 足がつっぱる
  • 歩きにくい
  • 階段を下りにくい

といった症状が出ることもあります。

首や肩の症状を伴っている場合には、整形外科または脳神経内科で相談しましょう。

▶︎ 頚椎症について詳しくはこちら


神経痛性筋萎縮症|強い肩の痛みのあとに腕が上がらない

**神経痛性筋萎縮症(Neuralgic Amyotrophy:NA)**は比較的まれな病気ですが、突然腕が動かなくなるため、脳卒中を心配して受診されることがあります。

典型的には、

  • 肩
  • 上腕
  • 肩甲骨周囲

などに、突然かなり強い痛みが出ます。

夜眠れないほど痛むこともあります。

その後、数日から数週間して、

  • 腕が上がらない
  • 肩に力が入らない
  • 手が動かしにくい
  • 筋肉がやせてくる

といった症状が出てきます。

通常は片側に起こります。

「強い肩の痛みが先にあり、そのあと腕の筋力が落ちてきた」という経過が重要な手がかりになります。


ギラン・バレー症候群|風邪や胃腸炎のあとに足から力が入らなくなる

ギラン・バレー症候群は、末梢神経に炎症が起こる病気です。

風邪や胃腸炎などにかかったあと、1〜2週間ほどして、

  • 足に力が入りにくい
  • 階段を上りにくい
  • つまずく
  • 手足がしびれる

などの症状が現れることがあります。

典型的には両足から症状が始まり、数日から数週間の間に上半身へ広がっていきます。

重症になると、

  • 歩けない
  • 飲み込みにくい
  • 顔が動かしにくい
  • 呼吸が苦しい

などの症状が出ることがあります。

症状が急速に進んでいる場合には、早めの受診が必要です。

▶︎ ギラン・バレー症候群について詳しくはこちら


脊髄炎など脊髄の病気

脳から手足へ「動いて」という命令を伝えているのが脊髄です。

この脊髄に炎症や圧迫などの異常が起こると、

  • 両足に力が入らない
  • 歩きにくい
  • 手足がしびれる
  • 体の途中から下の感覚がおかしい
  • 尿が出にくい
  • 尿失禁
  • 便が出にくい

といった症状が現れることがあります。

特に、

足の筋力低下+排尿障害

が同時に出てきた場合には、脊髄の病気を疑います。

早めに医療機関を受診してください。


筋炎など筋肉の病気

筋肉そのものに炎症などの異常が起こると、筋力が低下することがあります。

筋肉の病気では特に、

  • 椅子から立ち上がりにくい
  • 階段を上りにくい
  • 腕を上げにくい
  • 高いところの物を取れない
  • 髪を洗うのがつらい

といった症状が目立ちます。

手先や足先よりも、肩や太ももなど体に近い部分の筋肉が弱くなるのが特徴の一つです。

膠原病に伴う筋炎では、

  • 関節痛
  • 発疹
  • 発熱
  • 強い疲労感

などを伴うこともあります。

血液検査でCKなどの筋肉の数値を確認することがあります。


重症筋無力症|「最初はできるのに続けているとできなくなる」

重症筋無力症では、神経と筋肉のつなぎ目がうまく働かなくなります。

この病気の大きな特徴は、単純に「力が弱い」ということではなく、

筋肉を使い続けていると、だんだん力が続かなくなること

です。

例えば、

  • 朝は目が開いているのに夕方になるとまぶたが下がる
  • 最初は普通なのに長く話すと鼻声になる
  • 食事の途中から噛みにくくなる
  • 歯磨きをしていると腕が上がらなくなる
  • ドライヤーを持ち続けられない
  • 疲れると物が二重に見える

などがあります。

少し休むと症状が改善することも特徴です。

▶︎ 重症筋無力症の初期症状について詳しくはこちら


ALS|徐々に力が入らなくなり筋肉がやせてくる

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉を動かす運動神経が徐々に障害される病気です。

初期には、

  • ペットボトルのふたが開けにくい
  • ボタンをかけにくい
  • 箸が使いにくい
  • スリッパが脱げやすい
  • つま先が引っかかる

などから気づくことがあります。

症状のある部分の筋肉が徐々にやせてくることも特徴です。

一方、ALSでは、

しびれや強い痛みなどの感覚障害は一般的ではありません。

「手に力が入らないからALSなのでは」と心配される方もいますが、実際には頚椎症や末梢神経障害など、ALS以外の原因も多数あります。

自己判断せず、症状が続く場合には脳神経内科で相談しましょう。

▶︎ ALS(筋萎縮性側索硬化症)について詳しくはこちら


「力が入らない」ときに確認してほしいポイント

病院を受診するときには、次のような点が診断の重要な手がかりになります。

① いつからですか?

  • 突然
  • 数時間〜数日
  • 数週間
  • 数か月

のどれなのかを確認しましょう。

突然発症した場合には脳卒中をまず考えます。

② 片側ですか?両側ですか?

「右手と右足だけ」という場合には脳の病気を考えます。

一方、

「両足から徐々に力が入らなくなった」

という場合には、末梢神経や脊髄などの病気も考えます。

③ しびれや痛みがありますか?

筋力低下に加えて、

  • しびれ
  • 感覚低下
  • 首や腰の痛み

がある場合には、脊髄や末梢神経の病気が疑われます。

④ 筋肉がやせていませんか?

以前と比べて、

  • 手の筋肉
  • 腕
  • 太もも
  • ふくらはぎ

などが明らかに細くなっている場合には、一度脳神経内科で診てもらうことをおすすめします。

⑤ 使っていると悪くなりますか?

「最初はできるのに、続けているとできなくなる」

「休むとまたできる」

という場合は、重症筋無力症などを考える手がかりになります。


すぐに受診したほうがよい症状

次のような症状がある場合には、通常の外来を待たず、早めに医療機関を受診してください。

  • 突然、片側の手足に力が入らなくなった
  • 顔の片側が動かしにくい
  • ろれつが回らない
  • 急に言葉が出なくなった
  • 急に立てない・歩けない
  • 両足の筋力低下が急速に進んでいる
  • 息苦しさがある
  • 飲み込みにくさが急に悪化した
  • 尿が突然出なくなった
  • 激しい頭痛を伴う

特に突然の片側の麻痺、顔のゆがみ、ろれつ障害がある場合には、脳卒中を疑って救急受診を考えましょう。


何科を受診すればいい?

突然症状が出た場合

救急外来、脳神経内科、脳神経外科を受診します。

特に突然の片側麻痺やろれつ障害がある場合には、救急車を呼ぶことも検討してください。

徐々に力が入らなくなっている場合

脳神経内科がおすすめです。

脳神経内科では、

  • 脳
  • 脊髄
  • 末梢神経
  • 神経と筋肉のつなぎ目
  • 筋肉

まで幅広く診察します。

▶︎ 脳神経内科ではどんな症状を診る?詳しくはこちら

首や腰の痛みが強い場合

整形外科でも相談できます。

特に首の痛みと手のしびれ・筋力低下を伴う場合には頚椎症などが考えられます。


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まとめ

手足に力が入らない原因は一つではありません。

重要なのは、

「いつから」「どこに」「どのように」力が入らなくなったのか

という症状の出方です。

特に、

突然、片側の手足に力が入らなくなった場合には脳卒中の可能性があります。

一方で、

  • 徐々に手が使いにくくなる
  • 両足から力が入りにくくなる
  • 首や肩の痛みを伴う
  • 筋肉がやせてくる
  • 使っているうちに力が続かなくなる

という場合には、脊髄、末梢神経、筋肉、重症筋無力症など別の病気も考えられます。

「疲れているだけかな」と思っていても、筋力低下が続いている場合には、一度医療機関で相談してみてください。

特に症状が急に出た場合や、急速に悪化している場合には、早めの受診が大切です。

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神経内科専門医・総合内科専門医
はじめまして。「脳と神経の相談室」を運営している女医です。 神経内科専門医・総合内科専門医として15年以上診療に携わっています。 外来でよくいただく質問を中心に、しびれ、頭痛、めまい、認知症などについて、専門的な内容をできるだけわかりやすく解説します。 不安を少しでも減らし、受診のきっかけになるような情報発信を心がけています。
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