認知症の種類

認知症とは?症状・種類・治療について神経内科専門医がわかりやすく解説

脳と神経の相談室

はじめに

「最近もの忘れが増えた」

「同じ話を何度もするようになった」

「認知症ではないか心配」

認知症は高齢化とともに増加している病気です。

一方で、「年齢によるもの忘れ」と「認知症」は同じではありません。

この記事では、認知症とはどのような病気なのか、どんな症状が出るのか、治療や支援について神経内科専門医がわかりやすく解説します。


認知症とは?

認知症とは、脳の病気などによって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたした状態をいいます。

認知機能には、

  • 記憶
  • 判断力
  • 理解力
  • 注意力
  • 計画を立てる力

などが含まれます。

年齢とともに多少のもの忘れは誰にでも起こりますが、認知症では日常生活に支障が出ることが特徴です。


年齢によるもの忘れとの違い

年齢によるもの忘れ認知症
体験の一部を忘れる体験そのものを忘れる
ヒントがあれば思い出せるヒントがあっても思い出せない
覚える力は保たれている新しいことを覚えられない
自覚がある自覚が乏しいことが多い

認知症の主な症状

記憶障害

認知症では「思い出せない」というよりも、

新しいことを覚えられなくなる

ことが特徴です。

  • 同じことを何度も聞く
  • 約束を忘れる
  • 食事をしたこと自体を忘れる
  • 置き忘れが増える

などがみられます。


見当識障害

時間や場所、人が分からなくなる症状です。

  • 今日の日付が分からない
  • 今いる場所が分からない
  • 道に迷う

などがみられます。


遂行機能障害

物事を順序立てて行う能力が低下します。

  • 料理の段取りが組めない
  • 買い物の計画が立てられない
  • お金の管理が難しくなる
  • 複数の作業を同時に行えない

などがみられます。


感情コントロールの低下・前頭葉症状

前頭葉の機能低下によって、

  • 怒りっぽくなる
  • 不安が強くなる
  • 我慢ができなくなる
  • 頑固になる
  • 何事にも拒否的になる
  • こだわりが強くなる

ことがあります。

例えば、

  • デイサービスに行きたがらない
  • 介護サービスを拒否する
  • 入浴や服薬を拒否する
  • 毎日同じ行動を繰り返す

などがみられることがあります。

本人には病気の自覚が乏しいことも多く、家族が対応に苦慮する原因になります。


空間認知障害

頭頂葉の機能低下によって、

  • 駐車が苦手になる
  • 家具や壁によくぶつかる
  • 距離感が分かりにくくなる

ことがあります。


構成障害

図形や物を正しく組み立てたり描いたりする能力が低下します。

  • 時計が描けない
  • 図形の模写ができない
  • パズルが苦手になる

などがみられます。


認知症でみられる特徴的な行動

振り返り徴候

診察中に質問されると、

本人が答えられずに家族の方を振り返って答えを求めることがあります。

認知症の初期からみられることがあります。


取り繕い

分からないことを隠そうとして、

「そんなこと気にしたことないなあ」

「今は思い出せないだけ」

などと話を合わせたり、ごまかしたりすることがあります。


物盗られ妄想

認知症では、自分でしまった場所を忘れてしまい、

  • 財布がなくなった
  • 通帳を盗まれた
  • お金を取られた

と思い込んでしまうことがあります。

特に身近な家族や介護者が疑われることが多く、これを物盗られ妄想といいます。

症状が強い場合には警察へ相談したり、繰り返し通報したりすることもあります。

本人にとっては本当に盗まれたと感じているため、頭ごなしに否定するのではなく、まず不安な気持ちに寄り添うことが大切です。


認知症の主な種類

認知症にはさまざまな原因があります。

代表的なものとして、

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症

などがあります。

それぞれ症状や経過が異なります。

詳しくは別の記事で解説します。


認知症になりやすい人

認知症のリスクとして、

  • 高齢
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 運動不足
  • 難聴
  • 視力低下

などが知られています。


難聴や視力低下への対応も大切

脳は常に外界からの刺激を受けながら働いています。

難聴や視力低下によって脳への刺激が減ると、認知機能低下のリスクが高くなることが知られています。

そのため、

  • 難聴があれば補聴器を検討する
  • 白内障があれば早めに治療する

ことも大切です。


認知症の薬で物忘れは治る?

残念ながら、現在の認知症治療薬で失われた記憶を取り戻すことはできません。

また、従来から使用されている認知症治療薬には、認知症の進行を止める効果は期待できません。

認知症の薬は、

  • 意欲低下
  • 不安
  • 易怒性
  • 興奮
  • 幻視や妄想

などの症状を和らげる目的で使用されることがあります。

効果には個人差があり、すべての方に有効というわけではありません。


新しい認知症治療薬について

近年、アルツハイマー病に対する新しい治療薬が登場しています。

ただし、

  • ごく早期の患者さんが対象
  • 詳しい検査が必要
  • 限られた医療機関でのみ実施
  • 定期的な点滴治療が必要

など、適応には厳しい条件があります。

すべての認知症患者さんが受けられる治療ではありません。


薬だけでは解決できないこともある

認知症が進行すると、

  • 火の始末ができない
  • 金銭管理ができない
  • 服薬管理ができない
  • 一人での外出が危険になる

ことがあります。

重度の認知症では独居生活が難しくなるだけでなく、

日常生活の多くの場面で見守りや介助が必要になることがあります。


利用できる支援制度

介護保険を利用することで、

  • デイサービス
  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 福祉用具
  • ショートステイ

などの支援を受けることができます。


問題行動が強い場合

認知症の種類や進行によっては、

  • 徘徊
  • 暴言
  • 暴力
  • 物盗られ妄想
  • 強い被害妄想
  • 昼夜逆転

などがみられることがあります。

在宅生活の継続が難しい場合には、精神科病院や認知症専門病棟での入院治療が検討されることもあります。


認知症予防で大切なこと

認知症予防で大切なのは薬だけではありません。

  • 適度な運動
  • 人との交流
  • 趣味を続ける
  • 難聴や視力低下への対応
  • 高血圧や糖尿病の管理

なども重要です。

社会とのつながりを保つことは、認知機能を維持するうえで大切な要素です。


こんなときは受診をおすすめします

  • 同じ話を何度も繰り返す
  • 約束を忘れることが増えた
  • お金の管理が難しくなった
  • 道に迷うようになった
  • 性格が変わった
  • 家族が心配している

このような場合は早めに医療機関へ相談しましょう。


何科を受診すればよい?

認知症が心配な場合は、

  • 脳神経内科
  • もの忘れ外来
  • 精神科

で相談できます。


まとめ

認知症は単なるもの忘れではなく、日常生活に支障をきたす病気です。

現在の薬で失われた記憶を取り戻すことはできません。

しかし、適切な医療や介護サービス、運動や社会参加などによって、その人らしい生活を支えることは可能です。

気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

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代表的なものは以下の記事で詳しく解説しています。

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神経内科専門医・総合内科専門医
はじめまして。「脳と神経の相談室」を運営している女医です。 神経内科専門医・総合内科専門医として15年以上診療に携わっています。 外来でよくいただく質問を中心に、しびれ、頭痛、めまい、認知症などについて、専門的な内容をできるだけわかりやすく解説します。 不安を少しでも減らし、受診のきっかけになるような情報発信を心がけています。
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