顔のしびれは危険?脳梗塞との見分け方を神経内科専門医が解説
突然このような症状が出ると、
「脳梗塞ではないか」
と心配になる方も多いと思います。
顔のしびれには、脳梗塞など早急な対応が必要な病気もあれば、三叉神経の病気、片頭痛、帯状疱疹、歯科疾患、過換気など、さまざまな原因があります。
特に大切なのは、
- 突然始まったのか
- 片側だけなのか、両側なのか
- 顔だけなのか、手足の症状もあるのか
という点です。
この記事では、顔のしびれの主な原因と、すぐに受診したほうがよい症状について神経内科専門医がわかりやすく解説します。
顔のしびれで最も注意したいのは脳卒中
顔のしびれが突然出た場合、まず注意しなければならないのが脳梗塞や脳出血などの脳卒中です。
脳梗塞
顔の感覚を伝える神経の通り道は、脳幹や視床などを通って脳へつながっています。
そのため脳梗塞によって、
- 顔の片側だけがしびれる
- 唇だけがしびれる
- 口の周りだけ感覚がおかしい
- 舌や口の中に違和感がある
といった症状が出ることがあります。
脳梗塞というと「手足が動かなくなる病気」というイメージが強いかもしれません。
しかし、顔のしびれだけで発症することもあります。
また、
- 口の周りと手の指が同時にしびれる
- 顔と同じ側、あるいは反対側の手足がしびれる
といった症状がみられることもあります。
特に、
- 突然症状が始まった
- 手足のしびれや麻痺を伴う
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい
- 物が二重に見える
- 歩きにくい、ふらつく
などを伴う場合には、脳梗塞を疑って早急に医療機関を受診する必要があります。
しびれが治っても安心できないことがあります
顔のしびれが数分から数十分で自然に治った場合でも、安心とは限りません。
一時的に脳への血流が悪くなる**一過性脳虚血発作(TIA)**では、症状が完全に消えてしまうことがあります。
TIAは、その後に脳梗塞を起こす前触れとなることがあります。
「治ったから大丈夫」と様子をみず、突然出た神経症状は早めに受診しましょう。
脳梗塞の前兆について詳しくはこちら
脳出血
脳出血でも、出血した場所によって顔のしびれが起こることがあります。
頭痛や吐き気、手足の麻痺、意識の変化などを伴うこともあります。
突然の顔のしびれに、このような症状を伴う場合も早急な受診が必要です。
顔の感覚を担当する「三叉神経」の病気
顔の感覚を主に担当しているのが**三叉神経(さんさしんけい)**です。
三叉神経は、
- おでこから目の周囲
- 頬から上唇
- あごから下唇
など、顔の広い範囲の感覚を脳へ伝えています。
三叉神経そのものや、その神経が通る脳幹などに異常が起こると、
- 顔の一部分だけしびれる
- 頬の感覚が鈍い
- 唇やあごの感覚がおかしい
- 左右で触った感覚が違う
といった症状が出ることがあります。
症状が長く続く場合や、徐々に範囲が広がっている場合には、MRIなどで三叉神経や脳幹周囲を調べることがあります。
比較的若い方では、まれに多発性硬化症などの神経疾患が原因となることもあります。
三叉神経痛と「顔のしびれ」は少し違います
顔の神経の病気としてよく知られているものに三叉神経痛があります。
三叉神経痛では、
- 電気が走るような非常に強い痛み
- 数秒程度の短い痛みを繰り返す
- 歯磨き
- 洗顔
- 食事
- 顔に触れる
などをきっかけに痛みが起こるのが特徴です。
一方、顔のしびれは、
- ピリピリする
- 感覚が鈍い
- 麻酔がかかったような感じがする
- 左右で感覚が違う
といった感覚の異常が中心です。
三叉神経痛について詳しくはこちら
顔面神経麻痺|「しびれた感じ」がしても実際は麻痺のことも
「顔がしびれる」と感じて受診した方が、実際には顔面神経麻痺だったということもあります。
ここは非常に紛らわしいところです。
顔のしびれと、顔が動かしにくいことは本来別の症状です。
顔の感覚を主に担当するのは「三叉神経」ですが、顔の筋肉を動かしているのは「顔面神経」です。
顔面神経麻痺の主な症状
顔面神経麻痺では、
- 片側の口角が下がる
- ほうれい線が薄くなる
- 額にしわを寄せにくい
- 眉毛を上げにくい
- 目をしっかり閉じられない
- 頬を膨らませにくい
- 水を飲むと口からこぼれる
などがみられます。
患者さん自身は、
「顔がしびれた」
「顔の感覚がおかしい」
「顔が重たい」
と表現することもあります。
しかし典型的な末梢性顔面神経麻痺では、顔の感覚そのものは保たれていることが多いのが特徴です。
ベル麻痺やハント症候群
顔面神経麻痺の原因として多いのがベル麻痺です。
また、
- 耳の強い痛み
- 耳の周囲の水ぶくれ
- 難聴
- めまい
などを伴う場合には、帯状疱疹ウイルスによるラムゼイ・ハント症候群の可能性があります。
顔面神経麻痺と脳梗塞の区別も重要
脳梗塞でも顔が動かしにくくなることがあります。
一般的には末梢性の顔面神経麻痺では額を含めて顔の片側全体が動きにくくなり、脳梗塞では額の動きが比較的保たれることが多いとされています。
ただし、見た目だけで完全に区別できるわけではありません。
突然顔が動かなくなり、
- 手足の麻痺
- 顔や手足のしびれ
- ろれつが回らない
- ふらつき
などを伴う場合には、脳卒中を考えて早急な受診が必要です。
顔面神経麻痺について詳しくはこちら
片頭痛の前兆で顔がしびれることもあります
片頭痛では頭痛だけではなく、その前後にさまざまな神経症状が出ることがあります。
これを前兆と呼びます。
片頭痛の前兆では、
- 口の周りがしびれる
- 顔の片側がしびれる
- 手や指先がしびれる
- しびれが少しずつ広がっていく
- 視界にキラキラした光が見える
などの症状が出ることがあります。
脳梗塞では症状が突然完成することが多いのに対し、片頭痛の前兆では数分かけて症状が徐々に広がることがあります。
その後に頭痛が起こることが多いですが、頭痛をほとんど伴わない場合もあります。
ただし、
- 初めて出た症状
- いつもの片頭痛と違う症状
- 突然出現したしびれ
- 麻痺やろれつ障害を伴う
場合には、自己判断で「片頭痛だろう」と決めつけず、脳卒中との区別が必要です。
片頭痛について詳しくはこちら
帯状疱疹|しびれや痛みのあとに発疹が出ることも
帯状疱疹が顔に起こると、
- ピリピリする
- ヒリヒリ痛む
- 触ると痛い
- しびれたように感じる
- 水ぶくれが出る
などの症状がみられます。
特徴的なのは、発疹が出る前から痛みやしびれが始まることがあることです。
そのため最初は「原因不明の顔のしびれ」と感じることがあります。
目の周囲に症状がある場合
目の周囲や額、鼻などに発疹が出ている場合には、角膜などに影響することがあります。
早めに眼科を受診しましょう。
耳の周囲に症状がある場合
耳の痛みや発疹に加えて、
- 顔面神経麻痺
- 難聴
- めまい
などがある場合には、ラムゼイ・ハント症候群の可能性があります。
この場合は耳鼻咽喉科などでの早期治療が重要です。
歯やあごの病気でも唇がしびれることがあります
顔のしびれ、特に唇やあごのしびれでは歯科疾患が原因となることもあります。
例えば、
- 虫歯
- 歯周病
- 親知らず
- 歯の根の炎症
- 歯科治療後
などです。
下あごの神経は歯の近くを通っているため、歯の病気や治療の影響で唇やあごの感覚が変化することがあります。
歯の痛みや腫れを伴う場合や、歯科治療後から症状が始まった場合には歯科へ相談しましょう。
過換気や強い不安で口の周りがしびれることも
脳や神経に大きな異常がなくても、過換気によってしびれが起こることがあります。
過換気では呼吸が速くなりすぎることで血液中の二酸化炭素が低下し、
- 口の周りがしびれる
- 顔の両側がしびれる
- 両手の指先がしびれる
- 手がこわばる
- 息苦しい
- 動悸がする
- 強い不安を感じる
といった症状が出ることがあります。
特に、口の周りと両手の指先が同時にしびれる場合は過換気でみられることがあります。
ただし「ストレスだろう」と最初から決めつけるのは禁物です。
初めての症状や、片側だけの症状、手足の麻痺などを伴う場合には、まず脳や神経の病気がないか確認することが大切です。
顔のしびれは何科を受診すればいい?
原因によって適切な診療科が異なります。
すぐに受診したほうがよい場合
次のような症状がある場合には、脳卒中の可能性を考えて早急に医療機関を受診してください。
- 突然顔がしびれた
- 顔の片側だけが突然しびれた
- 手足の麻痺やしびれを伴う
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい
- 物が二重に見える
- 歩けない、強くふらつく
- 意識がおかしい
- 今までにない強い頭痛を伴う
症状が短時間で治った場合も、TIAの可能性があるため注意が必要です。
脳神経内科
- 原因がわからない顔のしびれ
- 顔の片側だけのしびれが続く
- 数日以上続いている
- 何度も繰り返す
- 手足にも症状がある
このような場合は脳神経内科が適しています。
歯科
- 歯が痛い
- あごや唇だけがしびれる
- 歯科治療後から症状が出た
場合には歯科へ相談しましょう。
皮膚科
顔に水ぶくれや発疹がある場合には、帯状疱疹の可能性があるため皮膚科を受診しましょう。
眼科
目の周囲に帯状疱疹と思われる発疹がある場合は眼科受診が必要です。
耳鼻咽喉科
- 顔が動かしにくい
- 耳の痛みや水ぶくれがある
- 難聴がある
- めまいを伴う
場合には、顔面神経麻痺やハント症候群などを考えて耳鼻咽喉科への相談も検討します。
まとめ
顔のしびれにはさまざまな原因があります。
特に重要なのは、突然始まった顔のしびれでは脳卒中を見逃さないことです。
脳梗塞は必ずしも手足の麻痺から始まるわけではなく、
- 顔だけ
- 唇だけ
- 口の周りだけ
のしびれで発症することもあります。
また、症状が短時間で消えてもTIAの可能性があります。
一方で、顔のしびれは、
- 三叉神経の病気
- 片頭痛の前兆
- 帯状疱疹
- 歯科疾患
- 過換気
などでも起こります。
また、「顔がしびれる」と感じていても、実際には顔面神経麻痺によって顔が動かしにくくなっている場合もあります。
「顔の感覚がおかしい」のか、「顔が動かしにくい」のかを確認することも大切です。
原因がわからないしびれが続く場合や、何度も繰り返す場合には、脳神経内科へ相談しましょう。
