脳神経内科とは?どんな症状・病気を診るの?【神経内科専門医が解説】
「手がしびれる」「力が入りにくい」「ふらつく」「手が震える」――。
こんな症状があるとき、何科を受診すればいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
脳神経内科(神経内科)は、脳・脊髄・末梢神経・筋肉などの病気を診る診療科です。
私は神経内科専門医として15年以上診療してきましたが、外来でも
「この症状で神経内科に来てよかったのでしょうか?」
と聞かれることは珍しくありません。
この記事では、脳神経内科ではどんな症状や病気を診るのか、脳神経外科や精神科とは何が違うのかを、できるだけわかりやすく解説します。
脳神経内科と神経内科は同じ?
基本的には同じ診療科です。
以前は「神経内科」という名称が一般的でしたが、日本神経学会は2017年に、標榜診療科名を「神経内科」から「脳神経内科」へ変更することを決定しました。
その理由のひとつが、「神経内科」という名称では精神科や心療内科と混同されやすく、脳卒中や認知症、パーキンソン病など、脳や神経の病気を診療する科であることが一般の方に伝わりにくかったためです。
現在は「脳神経内科」という名称を使用する医療機関が増えていますが、「神経内科」という名称を使用している医療機関もあり、基本的には同じ領域を診療しています。
脳神経内科では、脳だけではなく、
- 脳
- 脊髄
- 末梢神経
- 筋肉
- 神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)
などに起こる病気を診療します。
つまり、「脳神経内科」という名前ですが、脳だけを診る診療科ではありません。
脳神経内科ではどんな病気を診るの?
脳神経内科が診療する病気は非常に幅広くあります。
脳に起こる病気
代表的なものには、
- 脳梗塞
- 認知症
- パーキンソン病
- てんかん
- 片頭痛などの頭痛疾患
があります。
脊髄・末梢神経の病気
脳だけではなく、脊髄や手足に伸びる神経の病気も脳神経内科の診療範囲です。
たとえば、
- 末梢神経障害
- 多発性硬化症などの中枢神経の病気
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
などがあります。
筋肉や神経筋接合部の病気
筋肉そのものの病気や、神経から筋肉へ指令を伝える部分の病気も診療します。
代表的な病気として、
- 重症筋無力症
- 筋炎・ミオパチーなどの筋疾患
があります。
このように、「脳神経内科」という名前ですが、脳だけを診る診療科ではありません。
どんな症状があったら脳神経内科を受診する?
次のような症状がある場合には、脳神経内科で原因を調べることがあります。
- 手足がしびれる
- 手足に力が入りにくい
- 手が震える
- 歩きにくい、ふらつく
- ろれつが回らない
- ものが二重に見える
- まぶたが下がる
- 頭痛を繰り返す
- めまいが続く
- 物忘れが気になる
- 意識を失った、けいれんした
- 飲み込みにくい
ただし、同じ症状でも原因はさまざまです。
たとえば手のしびれは、脳や末梢神経の病気だけではなく、頚椎など整形外科領域の病気でも起こります。
「脳神経内科なのか整形外科なのかわからない」という場合もあるでしょう。
そのようなときは、まず脳神経内科で神経学的な診察を受け、必要に応じて整形外科など適切な診療科につないでもらうという受診の仕方でも問題ありません。
脳神経内科ではどんな診察をする?
脳神経内科では、症状について詳しく聞くだけでなく、神経学的診察を行います。
たとえば、
- 手足の力
- 感覚
- 腱反射
- 眼球の動き
- 顔の動き
- ろれつ
- 手足の動かし方
- 歩き方
- バランス
などを確認します。
これらの診察から「脳の問題なのか」「脊髄なのか」「末梢神経なのか」「筋肉なのか」と、障害されている場所をある程度推測します。
そのうえで必要に応じて、
- MRI
- CT
- 血液検査
- 脳波検査
- 神経伝導検査
- 筋電図検査
などを行います。
問診と神経学的診察から病気の場所を推測していくことが、脳神経内科の大きな特徴です。
脳神経外科との違いは?
脳神経内科と脳神経外科は、どちらも脳や神経の病気を診療しますが、役割が少し異なります。
脳神経外科は、
- 脳出血
- くも膜下出血
- 脳腫瘍
- 脳動脈瘤
- 頭部外傷
など、手術や外科的治療が必要になる可能性のある病気を多く診療します。
一方、脳神経内科では、診察や検査によって神経症状の原因を調べ、薬物治療など内科的な治療を行います。
実際には脳神経内科と脳神経外科が協力して診療する病気も多くあります。
精神科・心療内科との違いは?
「神経内科」という名前から、精神科と同じような診療科だと思われることがありますが、基本的には異なります。
精神科や心療内科では、
- うつ病
- 不安障害
- パニック障害
- 不眠症
など、こころの症状を中心に診療します。
一方、脳神経内科では、脳・脊髄・末梢神経・筋肉などの病気によって生じる身体症状を中心に診療します。
ただし、神経疾患に伴って気分の変化や睡眠障害などが起こることもあり、必要に応じて精神科や心療内科と連携して診療することもあります。
「自律神経失調症」は脳神経内科?
めまい、動悸、発汗、だるさなどがあり、「自律神経が悪いのでは?」と考えて脳神経内科を受診する方もいます。
一般に「自律神経失調症」と呼ばれる症状だけで、必ずしも脳神経内科を受診する必要があるわけではありません。
一方で、パーキンソン病などの神経疾患に伴って自律神経症状が現れることもあります。
手足の震えや動かしにくさ、歩行障害、しびれなど、ほかの神経症状を伴っている場合には、脳神経内科での評価が必要になることがあります。
こんな症状は救急受診を
神経症状の中には、様子を見ずにすぐ受診した方がよいものがあります。
特に、
- 突然、片方の手足に力が入らなくなった
- 突然、顔の片側が動かしにくくなった
- 突然、ろれつが回らなくなった
- 突然、言葉が出なくなった
- 今まで経験したことのない激しい頭痛が突然起こった
- 意識がおかしい、けいれんが続いている
といった症状では、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。
このような場合は通常の外来を待たず、救急車の要請を含めて速やかな受診を検討してください。
何科に行けばいいかわからないときは?
しびれ、ふらつき、力が入りにくい、手が震えるなどの症状は、患者さん自身で原因を判断することは簡単ではありません。
「整形外科なのか脳神経内科なのかわからない」
「年齢のせいなのか病気なのかわからない」
という方も多くいらっしゃいます。
脳や神経の病気が心配な症状がある場合には、まず脳神経内科で相談して構いません。
診察の結果、整形外科や耳鼻咽喉科など別の診療科での診察が適していると判断されれば、必要な診療科へつなぐことができます。
「どこに行けばいいかわからないから受診しない」のではなく、気になる神経症状が続いている場合には、一度相談してみることが大切です。
まとめ
脳神経内科は、脳・脊髄・末梢神経・筋肉など、神経系に関わる幅広い病気を診療する内科です。
しびれ、力が入りにくい、ふるえ、歩きにくさ、頭痛、めまい、物忘れなど、脳や神経の病気が疑われるさまざまな症状を診療します。
「何科を受診すればいいのかわからない」という場合でも、神経症状が気になるときには脳神経内科が受診先の一つになります。
一方、突然の麻痺やろれつ障害、激しい頭痛などが出現した場合には、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があるため、速やかに救急受診してください。
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